尚、筋力トレーニングは、腰痛の慢性期を経て、医師や理学療法士の診断のもとに、専門のスポーツトレーナー、パーソナルトレーナー、アスレティックトレーナー、等が行うもので、激しい痛みが伴う場合は直ちに中止し、医師の診断を仰いでください。
① ドローイン
腹部、深層部にある腹横筋を引き締める事によって、腹圧を上げ、腰椎周りを安定させます。内側に筋肉のコルセットを、装備しておくと、考えてください。全てのエクササイズに、このドローインを用いてください。腹横筋の引き締め方(ドローイン)は、下記のとおりです。

まず、仰向けに寝て身体の力を抜いてください。

腹部のアップの画像(仰向けです。)
腕は邪魔なので、移動させました。

おへそ、及び下腹部を内側へ、へこませるようにします。上腹部は膨らんでいるように見えますが、下腹部は青いマット方向に凹んでいます。多少、腰椎も屈曲し、骨盤も後傾します。
呼吸 がポイントになります。息をすって準備。息を吐いてドローイン。繰り返し練習してください。ちなみに、ゆっくりとしたペースで、やわらかく動作を繰り返した方が、腹横筋は締まり易くなります。
②アブプレップ
ピラティスのエクササイズです。①のドローインを用いて、(ピラティスでは、骨盤の配置で、*インプリントを用います。)仰向けのポジションから、上体をゆっくり起こしていきます。上体を起こしきるのではなく、腹部の緩やかな締めを意識してください。

骨盤、脊柱は
ニュートラル。
息を吸って準備

息を吐きながら、ドローイン(ピラティスでのインプリント)。上体をゆっくり起こしていきます。
*ピラティスでのインプリントは 、腹横筋の締めだけではなく、骨盤底の筋肉群、及び腹斜筋の締めも協働して形成されます。骨盤はやや後傾し、腰椎もわずかに屈曲。腹部、腰部が非常に安定した状態になります。様々なエクササイズを極めて安全にできる、優れた骨盤の配置となります。
③ブレス・ストローク・プレップ
このエクササイズもピラティスから引用。 腰部そのものではないが、連結している脊柱起立筋上部、中部を伸展させるエクササイズ。上体を反らせることによって生じる腹部の緩みに気をつけ、肩甲骨、腰椎周りを安定させること。

左画像がスタートポジション。
息を吸って準備
肩甲骨を安定

息を吐きながら前腕を軽くマットに押し付けるようにして
胸椎、頚椎を斜め上方向に伸ばしていく。もう一度息を吸って、息をはきながら・・・、

ゆっくりとスタートポジションにもどる。
④ヒップロールズ
引き続き、ピラティスのエクササイズです。

骨盤、脊柱は、ニュートラル(中間位)。息を吸って準備。

同様のプロセスで、スタートポジションにもどる。
⑤ハーフロール・バック

息を吸って準備。両腕は床と平行。肩の力を抜き、腹横筋を締める。

息を吐きながらスタートポジションにもどる。
⑥シングルレッグ・ストレッチ

息を吸って準備。腹横筋を締め、骨盤を安定(インプリント)させておく。
スタートポジション

息を吐きながら、左脚を引き寄せ屈曲。右脚は遠くへ伸ばして伸展。
息を吸いながら両脚を戻し・・・

この動作を繰り返す。
このエクササイズは、動きの中で、どれだけ脊柱や骨盤、そして肩甲骨を安定(ぐらぐら揺らさず)させられるかも、評価のひとつです。
⑦サイドレッグリフト


息を吐きながらスタートポジションにもどる
このエクササイズも、脚の動きに惑わされず、脊柱、骨盤をしっかり安定させるように心がけること。腹横筋、腹斜筋をしっかり意識する必要がある。
⑧片脚ショルダーブリッジ

骨盤、脊柱をニュートラル、ふ腹横筋を締め、片方の脚は膝を立てた状態。片方の脚を挙げて、息を吸って準備。

息を吐きながら骨盤を上げていきます。


これを5~8回、左右の脚で2~3セット繰り返す。
⑨サイドブリッジ

横向きで骨盤を持ち上げ、脊柱と骨盤をニュートラル(中間位)。できるだけ一直線になるよう姿勢をキープ。
このまま、ドローインを繰り返し、30秒から1分間、姿勢をキープ。
⑩プランク

膝をマットにつけないこと。
以上、腰痛からの回復及び、再発防止のための筋力トレーニングをご紹介しましたが、全ての腰痛症に適応されるわけではありません。症状別に使い分ける必要があります。
筋肉性腰痛症(ぎっくり腰)
重複しますが、痛みがある程度無くなってから各筋力トレを行ってください。推奨されるトレーニングは、①~⑦、できるだけゆっくりとしたスピードで行ってください。⑧、⑨、⑩は運動強度が高いので、パーソナルトレーナーやアスレティックトレーナー等、専門家についてもらってください。ストレッチも忘れずに。
変形性腰椎症、椎間関節症
筋力トレーニングよりも、ストレッチの方が有効ですが、症状として、左右どちらかに痛みが偏っていたり、前かがみになった時より、反り返った時の方が、痛みが出たりと、筋力のバランスにも修正できる要因があるので、やはりやっておいたほうが良いでしょう。推奨されるトレーニングは、①~④と、⑧、⑨です。③、④は、背骨(脊柱)を反らせるのではなく、伸展(伸ばす)する事を意識してください。⑧は、①のドローインを組み合わせ、しっかり腰椎を安定させた上で、行ってください。痛みがある場合は、中止しましょう。
脊椎管狭窄症、脊椎分離・すべり症
反り返ったり、身体を捻ったりすると、腰痛を悪化させてしまうので、③、④は禁忌エクササイズです。したがって、①、②と⑤~⑦が推奨エクササイズです。⑧~⑩は、チャレンジエクササイズです。腰を反らせないよう、捻らないよう、安定させることにチャレンジしてみてください。特に⑧の片脚ショルダーブリッジは、上げている脚側の腰(骨盤)が下がり、腰椎が捻転しがちです。また回数をこなそうとすると、大殿筋(お尻の筋肉)が疲労し、腰を反らせてしまいがちになるので、ある程度の筋力があり、正しく行う自信がある人だけチャレンジしてください。⑧の片脚ショルダーブリッジは、トレーニング上級者向けと位置づけておきますので、ご注意を。
椎間板ヘルニア
身体を前方に曲げたり、中腰の姿勢になると痛みを発症させがちなので、②、⑤、⑥は禁忌エクササイズになります。避けたほうがよいでしょう。推奨エクササイズは、①、③、④、⑦~⑩の7種類です。結構多いですが、実はそう単純なものではありません。ヘルニアを患ってらっしゃる方は、実は狭窄症や、椎間関節症を併発させている方も珍しくないのです。つまり、推奨エクササイズの中にある、③、④で、痛みや不快感を訴える方もいらっしゃるのです。また、坐骨神経痛により、⑦のサイドレッグリフトや、⑧の片脚ショルダーブリッジを正しくできない方もいらっしゃいます。それぞれ、痛みが伴わないエクササイズを加味しながら、ストレッチと併合してやってみてください。パーソナルトレーナーや、アスレティックトレーナーの判断のもとで、トレーニングされることを推奨しておきます。
腰痛は人それぞれ、痛みも多岐にわたります。したがって、筋力トレーニングも使い分ける必要があります。専門医や理学療法士、トレーナーとよく話し合って、楽しく、また、根気よく続けられることを心掛けてください。きっと有意義なものになるはずです。